【シリーズ連載】第六回「デイトナ」日本経済が停滞していた20年間で市場価格はどれくらい高くなった?

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資産価値が高いブランド品をご紹介する連載企画。

第六回は「ROLEX(ロレックス)」のアイコン「コスモグラフ デイトナ」を取り上げる。

言わずと知れた腕時計界のド定番アイテム。そして例に漏れず、定価や市場価値も上がり続けているアイテムの一つである。

プレミア化している腕時計の先駆けともいえるデイトナの魅力や特徴を、余すところなく解説していく次第だ。

ロレックスのフラッグシップ

現行のデイトナRef.126500LN
現行のデイトナRef.126500LN

今日のロレックスはラグジュアリーウォッチの代名詞であるが、幅広いシーンにおける「実用性」を重視しているメーカーだ。

以前ご紹介した「エクスプローラー」は探検家のため視認性を究極に高めたモデル、他にも高い防水性を備えた世界初のダイバーズウォッチ「サブマリーナー」、国際線パイロットに向けて異なる地域の時刻を同時に把握できる「GMTマスター」など、シーンに特化した実用性を第一に開発されている。

これらのモデルは、ロレックスの中でも「プロフェッショナルウォッチ」と位置付けられ、「デイトジャスト」などの「ドレスウォッチ」と差別化されている。

プロフェッショナルウォッチの中でも、フラッグシップとしてロレックスの技術が結集したモデルが「デイトナ」である。

宇宙に行くための腕時計として開発がスタート

「コスモグラフ」というムーンフェイズやカレンダー機能を採用したモデルが元となり、のち1961年に「コスモグラフ デイトナ」として発表したモデルが、現在でも親しまれているデイトナである。

デイトナはフロリダ州の「デイトナビーチ」に由来しているとされているが、コスモグラフという名の通り、当時アメリカのアポロ計画のために開発されたモデルであった。多くの高級腕時計メーカーとNASA公認クロノグラフの座を争い開発を競っていたが、最終的に選定されたのは「OMEGA(オメガ)」のスピードマスターである。

その時は後塵を拝したデイトナだが、機能性の高さとデザイン性から多くプロレーサーによって愛用されることになる。

その後1991年からは、24時間耐久「デイトナレース」のスポンサーをロレックスが務めるなど、レース業界とも深い繋がりを得ている。

ロレックスで唯一クロノグラフ機能を備える

デイトナの一番の特徴は「クロノグラフ」と呼ばれるストップウォッチ機能を、ロレックスで唯一備えたモデルである点。

文字盤の中にはストップウォッチ機能における時間を測るための三つのインダイヤルが設置され、通常の時間調整を行う中央のリューズの他に、さらに上下二つのプッシュボタンがあることがクロノグラフの特徴である。

また、クロノグラフ機能を用いて速度を測ることができる「タキメーターベゼル」を採用している。

ストップウォッチの要領で、レース開始と同時にクロノグラフをスタートさせ、1km地点に到達した際にストップすることで、クロノグラフ秒針がタキメーターベゼルに刻まれた平均速度を指し示す仕様だ。

クロノグラフ自体は、数多くの高級時計メーカーが展開している機構の一つだが、リューズの他にプッシュボタンを設置しなければならず、防水性の確保が難しいとされている。

しかし、ロレックスは100mの防水機能を備え、悪天候における実用に耐えうる設計としている。

自社開発の自動巻クロノグラフムーブメント

上下のプッシュボタンとインダイヤルがクロノグラフの証
上下のプッシュボタンとインダイヤルがクロノグラフの証

ロレックスは意外にもクロノグラフの開発には遅れをとっていたメーカーと言えるかもしれない。

4桁Ref.のデイトナ(6241,6263など)は手巻きムーブメントを採用していた。当時はバルジュー社(現ETA社)が開発したクロノグラフムーブメントを改良したものを搭載しており、1988年に発表されたRef.16520では、ゼニス社の名作「エル・プリメロ」の自動巻きムーブメントを搭載していた。

完全に自社ムーブメントとなったのは、2000年に発表されたRef.116520からと比較的最近である。

エル・プリメロ搭載のデイトナは今も人気

現在は自社制作となり、安定性だけでなく小型軽量化を実現しているロレックス社製のクロノグラフムーブメントではあるが、過去のエル・プリメロを搭載したモデルは根強い人気を誇る。

Ref.16520とRef.116520は実はムーブメント以外の外観はほとんど変わりはないとされている。

しかしながら、セカンドマーケットではエル・プリメロのムーブメントが搭載された5桁Ref.モデルの方が高額だ。

腕時計フリークとしては、腕時計界の王様ともいえるデイトナに、他社メーカーの名作エル・プリメロのムーブメントが搭載されていることに、コレクターズ価値を見出しているのである。

ロレックスの腕時計はデイトナに限らず、大幅なアップデートだけでなく、公表されていない細かなマイナーアップデートが多く、同じRef.でも仕様が異なるケースも多い。

過去のモデルは、そうした細かな仕様の違いで、大きく相場が変わる場合がある。

ロレックスでもっとも入手が難しいモデル

ロレックスの中でも特に入手困難を極める
ロレックスの中でも特に入手困難を極める

ロレックスのプロフェッショナルモデルは現在いずれのモデルも入手困難を極める。

巷では、手に入れたい希少モデルを求めて足繁く正規店に通うことを形容した“ロレックス マラソン”という言葉も広まっている。

そんな言葉が広まる前から、デイトナは簡単に購入できないモデルであった。

10年前に遡れば、ロレックスは今ほど入手が難しくなく、サブマリーナーやGMTマスターも店頭に並んでいたほどである。

しかしその時代をもってしても、デイトナは限られたVIP顧客や外商経由でない限り、購入が難しいモデルとされていた。

20年間のデイトナの価格推移

毎度のこと前置きが長くなってしまうが、それではデイトナの価格推移についてみていきたい。

ロレックスはいつの時代でも資産価値が高い腕時計とされているが、デイトナは古くからプレミアアイテムと位置付けられていた。

実際にどれくらい金額が上昇したのか、定価とセカンドマーケットの実勢価格に分けてご紹介する。

国内定価の推移

コスモグラフデイトナ(SS)定価推移
年代国内販売定価(税込)
2003年808,500円
2007年924,000円
2011年997,500円
2013年1,092,000円
2014年1,123,200円
2018年1,274,400円
2019年1,309,000円
2020年1,387,100円
2021年1,457,500円
2022年1,757,800円
2023年1,974,500円
2024年2,176,900円

なお、この間にモデルチェンジは2回おこなわれている。

  • 2018年:Ref.116520→Ref.116500LN
  • 2023年:Ref.116500LN→Ref.126500LN

モデルチェンジに関しては、大きく変わったのは2018年にセラミックベゼルが導入された点だ。

それまでデイトナはブラックとホワイトの二色のうち、ブラックカラーの方がより定番で人気を博していたが、Ref.116500LNからはホワイトカラーの人気が高まり、現在でもホワイトの方がやや相場が高い。

定価の上昇率はおよそ20年間で「2.5倍」である。

とはいえ、ここ5年間くらいの上昇率が極めて高く、グラフ上は省略してしまったが2023年には、二度の価格改定がおこなわれるなど、改定の頻度も増えている。

国内実勢相場の推移

コスモグラフデイトナ(SS)実勢相場推移
年代国内新品実勢相場の目安(税込)
2003年1,200,000円
2007年1,350,000円
2011年1,150,000円
2013年1,250,000円
2014年1,500,000円
2018年2,200,000円
2019年2,700,000円
2020年4,100,000円
2021年5,500,000円
2022年4,300,000円
2023年4,500,000円
2024年4,800,000円

セカンドマーケットの実勢相場に関しては、20年前から定価以上で推移していた。

リーマンショックの時期に多少下落したものの、定価の上昇に伴い安定して高騰を繰り返していたが、コロナ禍で相場が爆発した。

一度ピークアウトしたとはいえ、その後また上昇傾向にある。

2024年現在では定価も217万円とかなり高額になっているが、実勢相場は再度500万円に達する勢いとなっている。

手巻きヴィンテージのデイトナは超プレミア化

デイトナは現行品の相場高騰も著しいが、1980年以前のヴィンテージ品はさらに高騰している。

この時代のアイテムは手巻きムーブメントが搭載されており、機能的には現代モデルと劣るものの、ヴィンテージアイテムとして高い人気があり、相場は高騰し続けている。

ポールニューマン氏が愛用したデイトナ

引用:Chrono24より

米俳優でありレーサーとして活躍した故ポールニューマン氏が愛用したことで一躍有名になった、1960年代〜1970年代初期に製造されたデイトナ(Ref.6239,Ref.6241,Ref.6263など)は通称「ポールニューマンモデル」と呼ばれる。

ポールニューマンモデルは、文字盤のブラックとホワイトの色使い意外に、外周目盛りに赤が用いたものを指し、別名エキゾチックダイヤルともされている。(実際は、細かな仕様の違いでかなりバリエーションが豊富である)

この時代の定価は20万円ほどで、ましてや今のように入手困難な品物ではなかったとされている。

Ref.6239は定価148,000円という情報もある。(こちらは未確認のため参考までに)

その分、現代のデイトナと比較し生産数は少ない。

これらは現在実勢相場が3000万円以上と、凄まじく高騰している。

ヴィンテージのデイトナは総じて現行品以上のプレミア価格

もちろんポールニューマン以外のヴィンテージデイトナも存在する。

この時代はマイナーアップデートが極めて多かったこともあり、タキメーターベゼルのデザイン、文字盤のロゴの違い、色使いの違いなど細かな条件によってモデルごとに大きく相場が変わる。

しかし、4桁Ref.の自動巻きになる以前のデイトナを入手しようとすると、最低でも1,000万円以上のプレミア価格を用意しなくてはならない。

進化を続けるデイトナ

デイトナはロレックスがもっとも力を入れているモデルと言っても過言ではない。

そのため、毎年発表される新作情報でも、デイトナの予想やリークに関しては、特に注目を集める。

高価格帯アイテムも人気が高い

引用:Chrono24

ステンレス製のデイトナは古くから安定した人気があり、常に入手しづらいアイテムではあるが、近年はそれだけでない。

2013年に発表された最上位のプラチナ製モデル「デイトナ アイスブルー Ref.116506(現Ref.126506)」は、定価が10,992,300円と超高価格帯モデルでありながら、実勢相場は定価を上回っている。

また、2023年に発表されたル・マン24時間レースの100周年を記念した「デイトナ ル・マン Ref.126529LN)は、発売前から多くの注目を集めた。

こちらもブレスレットまでK18WG製で、定価7,407,400円と高額ながら、セカンドマーケットでは3,000万円以上で流通している。

そして、これらのモデルには、ロレックスで初めての「シースルーバックル(裏スケ仕様)」が採用された点も興味深い。

現在シースルーバックルが採用されているのが、この二つのデイトナに加え、2023年に新発表されたドレスモデル「1908」のみで、プロフェッショナルモデルに限れば、最上位のデイトナ二つだけということになる。

やはりデイトナがロレックスの中でも特別な位置付けであることは言うまでもない。

K18製モデルの人気も高まっている

引用:Chrono24

ステンレス製ではないデイトナが、ここまで入手困難になり相場が高騰したのは比較的最近のことだ。

個人的に大きな転機となったのは、2015年に発表された「オイスターフレックス(ラバーベルト)」の導入だと考えている。

それまで金無垢のデイトナは、K18製オイスターブレスレットの他にレザーベルトしか選択肢がなかった。デイトナのスポーティなイメージとレザーベルトの組み合わせは、どうしても身に付けるシーンを選ぶように思う。

事実、レザーベルトのデイトナはセカンドマーケットの人気も今ひとつであった。

しかし2015年に導入されたラバーベルトのデイトナは、すぐに定価を超える実勢相場とはいかなくとも、ステンレス製のモデルよりもよりラグジュアリーで、カジュアルシーンやスポーツシーンにも着用しやすいモデルとあって、今では定価を大きく超える実勢相場となるに至った。

2010年代までは、デイトナといえばステンレス製、それ以外のモデルはそこまで人気がなかったものの、ラバーベルトの導入やセラミックベゼルの採用などといった進化を続け、現在ではモデル問わず幅広い層に支持されている。

資産としてみるデイトナ

安定した資産価値も魅力の一つ
安定した資産価値も魅力の一つ

資産としてみるなら、デイトナ以上に資産価値が高い腕時計は他にないかもしれない。

少なくともデイトナの資産性はここ数年の高級時計ブームによる一過性ではなく、20年前から認められていた。

あくまで人気やトレンドに依存する特性上、確かなことはいえないがデイトナが廃れる日は、同時に腕時計全般見向きもされなくなった時かもしれない。

近年はプレミア価格が凄まじいことになっていて、現実的に正規店での購入はかなり難しい。

買った瞬間から大幅に含み益が発生する以上、コレクターだけでなく多くの転売目的のユーザーとの競争に身を置く必要があるからだ。

あなたのデイトナマラソンは終わりのないレースかもしれない。

しかし手に入れた暁には、価値を失わない生涯共にするにふさわしい一本となる。


(文=小林 嶺)